練習・トレーニング 2026-10-22
野球の筋トレメニュー|大学生のオフシーズンの組み方と週間例
「秋季リーグ戦が終わったら、冬は体を大きくしたい。でも何から始めればいいのかわからない」。大学野球部員の中には、そんな悩みを抱えたままオフシーズンを迎える人もいるのではないでしょうか。高校までは学校や監督が決めたメニューをこなしていても、大学では自分で組み立てる裁量が大きくなります。その分、メニューの考え方を持っているかどうかで、冬の過ごし方に差が出る場合があります。
この記事では、大学野球選手を対象にした調査と、厚生労働省が公表している筋力トレーニングの指針を土台に、オフシーズンの筋トレメニューの組み立て方を整理します。具体的な種目例と週間スケジュールの例も紹介しますが、体格・ポジション・怪我の履歴によって適切な内容は変わります。持病や痛みがある場合は、チームのトレーナーや医師に相談したうえで進めてください。
オフシーズンの筋トレは「土台づくり」と位置づける
オフシーズンのトレーニングの位置づけについて、野球選手向けの測定・トレーニングを手がける専門家が高校野球ドットコムの特集で語った内容が参考になります。この記事では、オフシーズンの目的を「体を大きくする、体力強化、ベースアップ」とし、試合期は「スピード感を持たせて、動く筋肉にする」ことが目的だと整理しています。さらに、トレーニングを止めてしまうと次第に退化していく点にも触れています。
この考え方を大学野球に当てはめると、冬は「土台を厚くする時期」、リーグ戦が近づくにつれて「動きの質を高める時期」へ重心を移していく、という見取り図が描けます。ただし、これは一人の専門家の考え方であり、すべてのチームに当てはまるわけではありません。自分のチームの方針や指導者の意見とあわせて判断してください。
大学野球のシーズンとオフシーズンはいつか
大学野球は多くのリーグで春季・秋季の年2シーズン制です。東京六大学や東都大学の2026年秋季リーグ戦の日程は、当サイトの東京六大学野球 2026年秋季の日程・結果や東都大学野球1部 2026年秋季の日程・結果で確認できます。
次に紹介する大阪大谷大学の調査では、春季(4・5月)と秋季(9・10月)の公式戦の前後にプレシーズン期間があるため、実質的にオフシーズンと呼べるのは12月から2月ごろの約3か月、という整理をしています。これは同大学の硬式野球部を前提にした区分です。リーグや大学によって公式戦の終了時期、全国大会の有無、定期試験の時期は異なります。自分のチームでは「いつからいつまでを筋トレに比重を置ける期間とするか」を、まず指導者と確認しておくことをおすすめします。
調査から見える「オフだけでは足りない」可能性
大阪大谷大学の伊藤知之氏が『スポーツ健康学会誌』第11号(2022年)に発表した論文は、同大学硬式野球部の選手18名(上級生9名、下級生9名)を対象に、2021年8月から2022年10月までの計5回、身体組成とスクワット・ベンチプレスの最大挙上重量を測定したものです。主な結果は次のとおりです。
- 最大挙上重量は14か月で、ベンチプレスが3kg程度、スクワットが10〜15kg程度向上した
- 体脂肪率は、オフシーズン中期にあたる1月に、8月・6月・10月より有意に高い値を示した
- 除脂肪体重(LBM)は、5回の測定で向上が見られなかった
- 全体の挙上重量は、ベンチプレスが78.6〜84.7kg、スクワットが115.8〜128.3kgの範囲だった
著者は、オフシーズンのみの筋肥大トレーニングでは野球に必要な筋量と筋力を獲得することが困難ではないかと考え、年間を通してトレーニング量と体重・LBMをモニタリングすることが重要だと結論づけています。一方で、これは1チーム18名の調査です。すべての大学野球部に同じ傾向があると言い切ることはできません。ここから読み取れるのは、「冬に頑張る」だけでなく「測って、年間を通して続ける」という視点が大切になりそうだ、という点です。
筋トレメニューを組む4つの原則
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の筋力トレーニングに関する資料には、メニューを考えるうえで参考になる記述があります。
- 筋トレには、ウエイトトレーニングだけでなく、腕立て伏せなどの自重トレーニングも含まれる
- 特定の部位だけでなく、胸・背中・上肢・腹・臀部・下肢などの大きな筋群に、全身まんべんなく負荷をかける
- 日常生活レベル以上の負荷で行い、少しずつ負荷を高めていく(漸進性過負荷の原則)
- 筋肉を休ませる休息日をとることも同じように重要である
同資料は、成人に対して筋トレを週2〜3日行うことを推奨しています。ただし、この数字は健康づくりを目的とした目安であり、競技力向上を目的とする場合は、その目的に合ったプログラムを実施するのがよいとも記されています。また、マシンを使う場合の例として、最大挙上重量の60〜80%の重さで8〜12回を繰り返す「標準的な運動プログラム」にも触れられています。
これらを野球部員向けに言い換えると、次の4点が出発点になります。
- 全身の大きな筋群を対象にする(上半身だけ、腕だけに偏らせない)
- 重さや回数を少しずつ上げる(先に回数・フォームを固めてから重量を上げる)
- 休息日を計画に組み込む(練習の強度が高い日と筋トレの日が重ならないようにする)
- 自分の状態に合わせる(痛みや疲労があるときは無理をしない)
種目の選び方と例
野球の動作は、下半身で生んだ力を体幹・上半身へ伝えていく連動が土台になります。そのため、種目は「下半身」「体幹・回旋」「押す・引く」の3系統をそろえるとバランスを取りやすくなります。以下は一般的に用いられる種目の例です。特定の効果や記録の向上を保証するものではありません。
| 目的 | 種目の例 | 組み立てのポイント |
|---|---|---|
| 下半身の力発揮 | スクワット、ランジ、ルーマニアンデッドリフト | フォームが安定してから重量を上げる |
| 下半身の瞬発力 | ボックスジャンプ、片足ジャンプ | 疲れていない日の前半に行う |
| 押す動作 | ベンチプレス、腕立て伏せ | 肩に違和感がある場合は可動域や重量を調整する |
| 引く動作 | ベントオーバーロウ、懸垂 | 押す種目と回数のバランスをとる |
| 体幹・回旋 | メディシンボールの回旋スロー、プランク | 腰を反らせすぎないよう注意する |
ベンチプレスやスクワットは、先に紹介した論文でも最大挙上重量の測定に使われた種目です。自分の現在地を知るうえで共通の物差しになります。ただし、高重量を扱う種目は補助者をつける、ラックの安全バーを使うなど、安全面の準備を優先してください。
週間スケジュールの例(週3回の場合)
上記の原則をもとにした、編集部が作成した一例です。ほかの練習の量や授業の時間割によって調整してください。
- 月曜:下半身(スクワット系・ジャンプ系)+体幹
- 水曜:押す・引く(ベンチプレス・ロウ・懸垂)+肩甲骨まわりの補強
- 土曜:全身(デッドリフト系・ランジ・回旋スロー)
ポイントは、同じ部位を連日追い込まないことと、チームの全体練習が重い日の前後に高負荷の下半身種目を置かないことです。週4回以上にする場合は、補強中心の日を挟むなど、休息日の確保を優先してください。
投手と野手で変える点
投手は肩や肘への負担が蓄積しやすいため、押す種目の重量や回数を急に増やすのは避け、肩甲骨まわりの安定性を高める補強を厚めにするのが一般的です。オフシーズンは投球数を抑えやすい期間でもあるため、土台づくりに時間を使いやすい時期といえます。投球の運動連鎖と球速の考え方は大学野球 投手の球速アップトレーニング、肩・肘の傷害予防は野球肩・野球肘の予防ガイドで整理しています。
野手は、スイングや送球に使う回旋動作と、走塁・守備で使う瞬発力のバランスが課題になりやすいと考えられます。回旋スローやジャンプ系の種目を週1回は入れるなど、重量だけに偏らない組み立てが一案です。
食事と記録でメニューを「測れるもの」にする
先の調査では、体重があまり変わらないまま、冬に体脂肪率が上がりLBMが下がる傾向が見られました。体重計の数字だけでは中身の変化がわからない場合があるといえます。可能であれば、チームのトレーナーや大学の測定機会を利用して体組成を月1回程度確認し、挙上重量・回数・体重を同じ表に記録しておくと、メニューを見直す材料になります。
食事については、野球部の食事メニューと増量の進め方で、たんぱく質の目安や補食の入れ方を出典付きで紹介しています。筋トレと食事は切り離さずに考えるのが基本です。
部員の取り組み事例と、リーグの数字との付き合い方
ツナカレメディアに掲載された京都大学準硬式野球大学を中心に行われる野球で、ゴムで覆った専用のH号球を使う。硬いボールの野球と軟らかいボールの野球の中間的な競技とされる。用語辞典で見る部の取材記事(2025年12月14日)では、部員同士で知恵を出し合い、フィジカルデータ分析やトレーニング理論を積極的に導入している取り組みが紹介されています。記事によると、前年度の主将の発案で、専門トレーナーの協力を得ながら進めているとのことです(準硬式野球部の事例で、硬式野球部のものではありません)。個人の努力に任せず、数値を共有して部全体で振り返る姿勢は、オフシーズンの取り組みを続けるうえでも参考になります。
また、筋トレの成果は試合の数字にすぐに表れるとは限りません。当サイトの東京六大学野球 打撃・投手成績ランキングのように、リーグの成績を定期的に眺めて、自分の課題(長打力、奪三振、球数など)を言語化しておくと、冬のメニューの優先順位をつけやすくなります。
オフシーズンにありがちな落とし穴
- 最初から高重量を扱い、フォームが崩れて腰や肩を痛める
- 上半身の種目に偏り、下半身や引く動作が不足する
- 記録を取らず、半年後に何が変わったかわからなくなる
- 食事の量が足りず、体重・筋量が増えない
- 痛みや違和感を我慢して続ける
痛みが続く場合は、種目を変えるだけでなく、トレーナーや医師への相談を優先してください。
まとめ
大学野球部員がオフシーズンの筋トレメニューを考えるときは、次の点を意識すると整理しやすくなります。
- 冬は「土台づくり」の時期と位置づけ、リーグ戦が近づくにつれて動きの質へ重心を移す
- 1チームの調査ではありますが、オフだけでなく年間を通してモニタリングを続ける視点が示されている
- 全身の大きな筋群を対象に、漸進的に負荷を上げ、休息日を確保する
- 下半身・押す引く・体幹回旋の3系統をそろえ、週の中で配分する
- 体重だけでなく体組成・挙上重量・食事を記録し、見直しの材料にする
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