怪我と予防 2026-09-18

野球肩・野球肘の予防|大学生投手が知っておきたい基礎知識

「高校までは大きな怪我はなかったのに、大学に入ってから投げ続けるうちに肩や肘に違和感が出るようになった」——大学野球部で投げ続けている選手やその保護者の中には、こうした不安を抱えている人もいるのではないでしょうか。野球肩・野球肘というと成長期の中高生に多いイメージを持たれがちですが、大学野球の環境には登板過多につながりやすい構造もあり、大学生になったからといって油断できるものではありません。この記事では、野球肩・野球肘の基本的な原因と予防の考え方を、大学野球部員という立場に即して整理します。医療的な診断・治療は整形外科などの医療機関への相談が前提になりますが、日々の練習の中で意識しておきたいポイントをまとめました。

野球肩・野球肘とは何か

野球肩・野球肘は、投球動作を繰り返すことで肩関節や肘関節に負担が蓄積し、痛みや可動域の制限が生じる障害の総称です。医療機関の情報によると、多くの場合は1回の投球で突然発症するのではなく、オーバーユース(使いすぎ)によって少しずつ負担が積み重なり、あるとき症状として表面化する経過をたどるとされています。投げる機会が多い投手に特に多く見られるとされますが、送球の機会が多い捕手にも一定数見られるとされ、投手以外のポジションでも無関係とはいえません。

野球肩・野球肘の発生数は、骨や関節がまだ発達途上にある小学生〜高校生の年代で多く報告される傾向があるとされ、大学生になると新規発症の報告は相対的に少なくなる傾向があるといわれています。もっとも、これは「大学生になれば安心」という意味ではありません。大学野球部新入生を対象にしたメディカルチェック研究では、肩の痛みがある選手ほど肘のストレステスト(Elbow Push Test)で陽性となる割合が高く、肩甲骨の動的安定性の低下が関与している可能性が指摘されています。中高生年代で負った負担が持ち越されているケースや、大学入学を機に投球フォームや練習量が変化することで新たに症状が出るケースもあると考えられ、大学生であっても予防の意識を持ち続けることが望ましいといえます。

大学野球ならではのリスク要因:登板過多になりやすい構造

大学野球には、中学・高校の野球とは異なるリスク要因もあります。それが、東京六大学野球連盟・東都大学野球連盟が採用している「勝ち点制」というリーグ運営の仕組みです。同一カードを2連戦(必要に応じて3戦目)で戦い、先に2勝したチームに勝ち点1が入るというルールのため、接戦のカードほどエース級の投手が中1日など短い間隔で立て続けに先発する場面が起こりやすくなります。さらに六大学・東都とも春季・秋季の年2シーズン制で、限られた投手層で1シーズンを戦い抜く必要がある点も、特定の投手に負荷が偏りやすい一因になります。

スポーツ報道では、こうした勝ち点制の特性が投手の登板過多につながりやすいことが指摘されており、チームの勝敗や順位がかかった状況では「エースの起用を控えるべきだ」という判断がしにくい構造があるとも報じられています。高校野球では週間の投球数上限を定めるルールが導入されている一方、大学野球のリーグ戦には同様の球数制限が一律に設けられているわけではないため、投球数や登板間隔の管理は選手本人・指導者・トレーナー側の判断に委ねられている部分が大きいのが実情です。だからこそ、大学野球部員自身が「今の自分の投球負荷はどれくらいか」を客観的に把握しておく姿勢が重要になります。

予防の基本①:投球数・登板間隔を自分でも記録する

日本臨床スポーツ医学会の提言(青少年の野球障害に対する提言)では、小学生は1日50球以内・週200球以内、中学生は1日70球以内・週350球以内、高校生は1日100球以内・週500球以内を目安とし、1日2試合の登板は避けるべきだとされています。これは主に成長期の年代を対象とした目安であり、大学生にそのまま当てはめる公式な基準ではありませんが、「投球数を可視化し、連投や急激な負荷増加を避ける」という考え方自体は年代を問わず参考になる部分です。

練習試合・リーグ戦・自主練習を含めた投球数や、前回登板からの間隔をノートやアプリで簡単に記録しておくと、コンディション不良の予兆に自分自身で気づきやすくなります。チームにトレーナーがいる場合は登板管理を相談し、いない場合でも投手同士・同期同士で声をかけ合い、連投が続いていないかを確認し合う習慣を持つことが、大学野球特有の登板過多リスクへの現実的な対策になります。

予防の基本②:柔軟性とフォームを見直す

投球障害の予防に関する研究では、肩や肘そのものだけでなく、肩甲骨・股関節・体幹を含めた全身の柔軟性と、それらが連動して働く「運動連鎖」が投球動作の負担に影響するという考え方が示されています。股関節の硬さは下半身の動きを制限し、開きが早くなったり上半身に余計な力が入ったりする要因になり、肩甲骨の動きが硬いと腕の軌道がずれ、無理に投げようとして肩や肘に負担が集中しやすくなるとされています。

ザムストなどスポーツ用品メーカーの情報でも、投球後のアイシングは有効な手段の一つとされる一方、「アイシングだけで安全というわけではない」とされており、フォームや投球数の管理と組み合わせて考える必要があるとされています。

下半身の踏み込みから体幹の回旋、肩・肘の振り出しへと力が伝わっていく一連の流れの中で、どこか一箇所の動きが硬かったり弱かったりすると、他の部位がその分を補おうとして負担が集中しやすくなるという考え方も、投球障害予防の研究では示されています。ウエイトトレーニングやランニングなど投球そのものとは別のトレーニングを取り入れ、下半身・体幹の土台を作っておくことも、肩肘の負担を分散させるという意味で予防の一環と考えられます。

予防の基本③:違和感を我慢せず、早めにチェックする

野球肩・野球肘は、投球中・投球後の違和感を我慢しながらプレーを続けているうちに悪化するケースが少なくないとされています。慶應義塾大学スポーツ医学総合センターの情報でも、オフシーズンを設けて肩肘に負担のかからない練習に切り替えることや、超音波(エコー)による検査で早期に状態を確認することが、重症化を防ぐうえで有効とされています。

大学の医務室やスポーツ医学系の附属機関を利用できる場合は、シーズン前後の定期的なメディカルチェックを活用するのも一つの方法です。

自分のチーム・リーグの状況を把握しておく

登板過多のリスクは、チームの投手層の厚さやリーグ戦の勝敗状況によっても変わってきます。東京六大学野球連盟は6校の総当たり1リーグ、東都大学野球連盟は1部から4部までの階層構造と、リーグの仕組み自体が異なるため、所属リーグによってシーズン中に投げる試合数や連戦の頻度も変わってきます。自分やチームメートの投球回数・登板間隔を振り返る材料として、東京六大学野球連盟の投手成績ランキング東都大学野球連盟1部の投手成績ランキングを参考に、投球回の多い投手がどのような登板間隔で起用されているかを確認しておくのもよいでしょう。また東京六大学野球の順位表で接戦のカードが続いているかどうかを見ておくと、エースへの負担が偏りやすい時期を予測する材料にもなります。勝ち点制のルール自体については、東京六大学野球・東都大学野球の仕組み解説記事で詳しく取り上げています。

まとめ

野球肩・野球肘は成長期に多いとされる一方、大学野球には勝ち点制による登板過多につながりやすい構造があり、大学生になっても予防の意識を持ち続けることが望ましいといえます。投球数・登板間隔の記録、肩甲骨や股関節を含めた柔軟性とフォームの見直し、違和感を我慢しない早めの相談という3つの基本を、日々の練習の中で少しずつ習慣にしていくことが、長くプレーを続けるための土台になります。気になる症状がある場合は、この記事の内容にとどまらず、整形外科やスポーツ医学の専門機関に相談することをおすすめします。

出典

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